「豊島・島キッチンの10年」をテーマにオンライン配信したせとうちばなしですが、先日から島キッチンブログでも発信しています。今回もこのせとうちばなしからお届けします。
「島キッチンの10年」を語る上で、欠かせない人といえば、島キッチンを建築した安部良さんです。
瀬戸内国際芸術祭2010のプランが進んでいた、12年前。北川フラムさんから「豊島に芸術祭と島の人の心をつなぐような場所をつくって欲しい」とリクエストを受けた安部さん。
最初、豊島を訪れた安部さんは、今も島キッチンに佇む2本の柿の木の下で、近所の方がおしゃべりを楽しんでいる姿に出会い、「この柿の木を10倍に広げたような場所をつくれたら」とアイディアが膨らんでいったそうです。
「母屋の建物全体をステージに見立てたとき、そこに立つ主演は島のお母さんたち。お母さんたちが料理をつくり、おもてなしをする姿をお客さんに見てもらうことが、豊島の文化を一番分かりやすく伝えられるのではないか」。
いろいろな人たちの手伝いによって、開幕直前、島キッチンはついに完成しました。
芸術祭後も継続的に運営をしている中で多くの人に出会うようになりました。世界中からお客さんが来てくれたり、島キッチンのお手伝いに参加するこえび隊も日本各地から来てくれています。
2014年からは、毎月開催している「島のお誕生会」があります。その月に誕生日を迎える島の方々を、家族や友達、島を訪れたお客さん、こえび隊、島キッチンのスタッフみんなで一緒にお祝いします。毎回さまざまなゲストを迎え、これまでのべ約300名以上をお祝いしてきました。島のお誕生会は、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、世代間を越えて集い、みんなが笑顔になる催しです。
また、毎月手作りの島キッチン新聞を発行し、島内全戸に配達したり、島内向けのお弁当の日も定期的に行なっています。
こうした取り組みを重ねていくなかで島キッチンは、島のみなさん、お客さん、こえび隊が集う場所になりました。そして、その10年の取り組みが評価され、今年、国内で最も権威のある建築の賞、日本建築学会の作品賞を受賞しました。
今も定期的に島キッチンを訪れ、見守ってくださる安部さん。
最後に「島キッチンは、豊島のみなさん、厨房に立つお母さん、お客さん、こえび隊などいろいろな人たちによってこれからも育てられていく場所だと思います」と語ってくださいました。